痔瘻(あな痔)
痔瘻は、肛門の内部と周囲の皮膚が「トンネル状の管」でつながってしまう病気です。
発生のメカニズム
- 感染: 肛門内の小さなくぼみ(肛門腺)に下痢便などの細菌が入り込み、化膿します(肛門周囲膿瘍)。
- 自壊・排膿: 溜まった膿が外へ逃げようとして、お尻の皮膚を突き破って出てきます。
- 慢性化: 膿が出た後に、肛門内(入り口)と皮膚(出口)を結ぶ「管(瘻管)」が残ります。これが「痔瘻」です。
なぜ手術が必要なのか
- 自然治癒しない: 瘻管は構造的な欠陥であり、抗生剤などの薬ではトンネルを消すことはできません。
- 複雑化のリスク: 放置すると枝分かれするようにトンネルが増え、治療が非常に困難になります。
- 痔瘻がん: 10年、20年と長期にわたって放置すると、慢性的な炎症から「がん」が発生するリスクが報告されています。
手術の方法
瘻管の走行(深さや方向)を精密に診断し、以下のいずれかを選択します。
- 切開開放術(レイオープン法): 瘻管を切り開く確実性の高い方法です。
- 括約筋温存術: 肛門を締める筋肉へのダメージを最小限に抑える手法です。
- シートン法: 瘻管に専用のゴムを通し、時間をかけてゆっくり治していく、筋肉への負担が少ない方法です。
裂肛(きれ痔)
裂肛は、硬い便や激しい下痢によって肛門の出口付近の皮膚(肛門上皮)が裂けてしまう状態です。
裂肛の「悪循環」
- 激痛: 排便時に強い痛みが生じるため、排便を我慢するようになります。
- 便秘: 我慢することで便がさらに硬くなり、次の排便でまた深く裂けます。
- 慢性化: 繰り返し裂けることで傷が「潰瘍(かいよう)」になり、周囲に「見張りイボ」や「肛門ポリープ」が形成されます。
- 肛門狭窄: 傷の修復過程で出口が硬く、狭くなってしまい、さらに裂けやすくなるという負のループに陥ります。
治療のステップ
- 保存的治療(基本): * 注入軟膏で炎症を抑え、緩下剤で「バナナ状の柔らかい便」にコントロールします。
- 多くの場合は、この「排便管理」だけで改善に向かいます。
- 慢性期の手術的治療: 薬で改善しないほど狭くなった場合、以下の外科的処置を検討します。
- 用手拡張術: 麻酔下で、硬くなった肛門を適切に広げます。
- 皮膚弁移動術(SSG): 狭窄が強い場合、狭い部分を切り広げ、近くの健康な皮膚をスライドさせて移植し、出口を根本的に広げます。
肛門の病気は「恥ずかしいから」と我慢して悪化させてしまう方が少なくありません。診察では、指診や肛門鏡を用いて数分で正確な診断が可能です。長年悩んでいた症状が、適切な処置や適切なお薬ですっきりと解消することも珍しくありません。一人で悩まず、まずは外来でご相談下さい。